2022.06.08
ペーパーレス化やテレワーク推進・リモート環境構築のため、現在多くの企業で書類の電子化が進められています。
書類の電子化はコストの大幅な削減、省スペース化、業務効率化など多くの効果が見込めることもメリットです。
しかし、国税に関する帳簿・書類や保管が義務付けられている書類を電子保存する場合には、関連する法律について理解をしておく必要があります。
そこでこの記事では、書類電子化のために押さえておきたい法律について解説します。
書類電子化のために把握しておきたいのが、帳簿や決算書、請求書などのビジネス文書を電子データとして保存することを認める、以下の2つの法律です。
ここからは、それぞれの違いについて詳しく解説します。
電子帳簿保存法(電帳法)とは、決算書や帳簿、請求書など国税関係の帳簿や書類を、電子データ(電磁的記録)として保存することを認めた法律のことです。
1998年に施行となって以降、これまで何度か改正されており、直近の2022年の改正では「事前承認制度の廃止」「タイムスタンプ要件の緩和」「検索要件の緩和」など大幅な条件緩和となりました。
電子帳簿保存法の主な区分は、以下の3種類です。
| 保存区分 | 詳細 |
|---|---|
| 電子帳簿等保存(電帳法 第4条1項・2項) | 電子的に作成した帳簿や決算関係の書類をデータのまま保存すること。 (例:自社で会計ソフト等を使用して作成した書類など) |
| スキャナ保存(電帳法 第4条3項) | 紙で作成・受領した請求書や領収証を画像データとして保存すること。 (例:取引先から受け取った請求書をスキャナで電子化して保存するなど) |
| 電子取引保存(電帳法 第7条) | 自社や取引先で電子的に授受した請求書などの取引情報をデータとして保存すること。 電子データは電子データのままで保存する必要がある。 |
※2022年1月に更新された電子帳簿保存法については、国税庁の動画チャンネルでも紹介されています。
電子帳簿保存法では「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの要件を満たす必要があります。
e-文書法とは、これまで紙媒体での保存が義務付けられていた特定の文書・書類を、電子データとして保存することを認める法律です。
「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(通則法)」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法)」の2つの法律の総称を「e-文書法」と呼んでいます。
| e-文書法で電子化可能な主な書類 | e-文書法で電子化できない書類 |
|---|---|
| ・財務・税金に関連する書類 会計帳簿、財産目録、資産負債状況書類、事業報告書、見積書、注文書、契約書、請求書、納品書 など ・会社経営に関連する書類 取締役会議事録、定款、株主総会議事録、組合員名簿 など ・企業決算に関連する書類 貸借対照表、損益計算書、監査報告書、剰余金処分案、附属明細書、損失処理案 など |
・緊急時にすぐに確認する必要がある書類(船舶に備える安全手引書など) ・現物性が高い書類(免許証、許可証など) ・条約による制限がある書類 |
上記のような書類のうち、要件を満たしたものであれば電子化が可能です。要件は各府省令によって異なりますが、基本要件は以下の4つです。
見読性はほぼすべての書類で求められますが、その他は書類によって異なります。
電子帳簿保存法とe-文書法は、いずれも書類の電子化に関わる法律ですが、いくつかの違いがあります。
国税帳簿書類の電子化の場合、e-文書法よりも要件の厳しい電子帳簿保存法が適用されるため、注意しましょう。
| 電子帳簿保存法 | e-文書法 | |
|---|---|---|
| 適用範囲 | 財務省・国税庁が管轄する法律 | 複数の監督省庁が管轄する約250の法律 |
| 対象となる書類 | 国税関連の帳簿・書類 | 国税に関連しない帳簿・書類で、証券取引法や会社法などによって保管が義務付けられているもの |
| 要件 | ・真実性の確保 ・可視性の確保 |
・見読性 ・完全性 ・機密性 ・検索性 |
| 税務署長などによる承認 | 不要(2022年1月以降) | 不要 |
※e-文書法の対象書類は約250の法律がかかわっており、電子帳簿保存法は、そのうちの一つの法律で、国税関係書類に特化して詳細な規定が定められています
書類電子化には、これまで主流だった紙媒体での保存とは異なるメリットがあります。
詳しくは以下の記事でも解説していますので、よろしければこちらも合わせてご確認ください。
書類の電子化を行う際は「電子帳簿保存法」「e-文書法」について把握しておくことが大切です。これらの法律に基づいて、会社の様々な書類を電子データ化すれば、コスト削減や業務効率化、テレワーク推進など、多くのメリットが期待できます。
一方で、満たさなければいけない要件や電子化できる書類・できない書類など、書類電子化における難しさを感じている方も少なくないようです。
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