2024.2.20
2024年1月1日に発生した能登半島地震をきっかけに企業防災の大切さを改めて実感し、BCP(事業継続計画)の策定・見直しを意識したという企業も多いのではないでしょうか?
日本は、世界的に見て自然災害の多い国であり、毎年、地震・台風・豪雨などの被害が続いています。そのため、企業も防災対策、BCP、BCMが重要になります。
「BCP」「BCM」これらの用語の意味は似ていますが微妙に異なります。
はじめに、それぞれの意味を解説します。
簡潔に言えば、BCPは災害が発生した場合の継続的な事業運営を計画し、BCMは組織全体で事業継続性を確保するための包括的なアプローチです。これらは補いあう関係であり、組織の強靭性を向上させるのに役立ちます。
この記事では内閣府の防災情報ページのガイドラインに基づき、BCM(事業継続マネジメント)の全体のプロセスを解説します。
出典:事業継続ガイドライン(令和5年3月)(内閣府)
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/guideline202303.pdf
基本方針の策定・実施体制の構築
BCM(事業継続マネジメント)の基本方針の策定は、組織が災害や緊急事態に対処し、事業を継続させるための基盤となります。そのため、取締役会または経営会議の決議を経ることが必要です。
BCM実施においては全ての部門や担当者が関与し、組織全体で情報を共有します。
事前対策及び教育・訓練の実施、継続的な見直し・改善を推進するための運用体制の構築が必要です。
なお、BCMの責任者は、社長もしくは担当役員など経営レベルであることが望ましいとされています。
事業影響度分析・リスクの分析・評価
まず最初に組織が直面する様々なリスク(具体的には地震や洪水などの自然災害、サイバー攻撃、サプライチェーンの中断など具体的な事象)を想定し、各業務プロセスや機能が災害や緊急事態に対してどれだけ影響を受けるか分析します。
「いつまでに復旧させるか」「どの水準まで復旧させるか」という点を決め、優先的に継続・復旧すべき重要事業を絞り込みます。
※内閣府の防災情報のページ(https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/sk.html)に地震や津波の想定被害報告書が掲載されているので参考にするとよいでしょう。
企業・組織が検討すべき事業継続戦略を検討する観点として、以下が特に重要と考えられます。
a.重要製品・サービスの供給継続・早期復旧
b.企業・組織の中枢機能の確保
企業・組織の本社などの重要拠点が大きな被害を受けた場合でも、中枢機能が停止することないようにする戦略・対策を考える必要があります。
例えば
被災後に、重要業務の目標復旧時間、目標復旧レベルを実現するために実施する戦略・対策、あるいはその選択肢、対応体制、対応手順等を定めます。
BCPにおいては、特定の発生事象(例えば地震や水害)による被害想定を前提にするものの、「どのような危機的事象が発生しても重要業務を継続する」という目的意識を持って実施されることを認識し、被害の様相が異なっても可能な限り柔軟さも持つように策定することが推奨されます。
実施することが多い主な事前対策として以下の例があげられます。
緊急時には重要な役割を担う者と連絡がつかない場合に備え、権限委譲や、代行者及び代行順位も定めます。
また、対応手順においては時間の経過とともに必要とされる内容が変化するため、初動段階で実施すべき対応と、初動対応が落ち着いた後の事業継続対応について定めます。
自治体等のHPでBCP取組事例集を掲載していますので、策定する参考にすると良いでしょう。
【参考】
内閣府の防災情報のページ:企業の事業継続計画(BCP)の策定事例
九州経済産業局ウェブサイト:「大切なビジネスを守るBCP事例集」
BCMを実効性のあるものとするには、経営者をはじめ役員・従業員に事業継続の重要性を共通の認識として持たせ、その内容を社内に定着させることが重要です。
定期的な講義、eラーニング等による教育や、特定の災害を想定した模擬演習や状況想定訓練等、実効性の高い訓練を実施すると良いでしょう。
人事異動や取引先の変更等あった場合や、事業所、製造ライン、業務プロセス等の業務実施方法の変更、新製品・サービスの提供開始、新たな契約締結などの事業内容の変化、利害関係者からの要求、法令改正など、様々な要因に対して、BCMが合致しているか、必要な変更が行われているか等定期的に見直す必要があります。
日本では毎年のように自然災害が多く発生していますが、いつどこでどのような災害に巻き込まれる可能性があるかを正確に知ることはできません。
企業が計画的・組織的に危機的な発生事象への備えを行っていることは、取引先等の利害関係者、行政、市場などから、高く評価されてきています。
さらに、事業継続の取組を行うことは、サプライチェーンの視点も含め、産業競争力を強化する上で有効との認識も強まっています。
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